Laid back tapir

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のんびりしたバク

 

彼女は大人になったばかりだった。

バクは、大人になったら”夢”を食べなくてはいけなかった。

今日は、大人になった彼女たちのための成人の日だ。

レクチャーを受ける彼女たちはベレー帽をかぶって成人式に参加するのが習わしだった。

少しだけおしゃれをした彼女は、仲間たちと少し話をしながら整然と並んだ。

そして、式が開始され、バクの長老が話し始めた。

「えー、私たちバクは、悪い夢を食べて、少しでも良いことをしましょう。」

彼女には、違和感が残った。

”悪い夢”は、誰にとって悪い夢なの?

だって、泥棒が職業の人は、警察に捕まる夢は悪い夢でしょ?

それを食べることは”良いこと”なの?

彼女は、そっと呟いた。

それを聞いていた仲間が、そう言われると…と、長老に質問を始めた。

「良い、悪いだけで言われても、どの夢を食べて良いのか分かりません!」

「そうだ!明確な基準を設けろ!」

その式は荒れた。

翌日、そのニュースはバクの村を駆け巡った。

「これだから若い奴は。」

先輩バクたちは、そのニュースに憤った。

そのニュースにも彼女は違和感を持った。

実際に式に参加していなくては分からないこともあるのになぁ。

まぁ仕方ないか。

彼女は、そのことに憤ることも悲しむこともしなかった。

さぁ、どんな”悪夢”を食べようかしら。

彼女は、とりあえずやってみることにした。

やらなければ分からないこともある。

彼女は、のんびりしているようで、色々と考えているのだ。

頼もしい彼女にそっと、てんとう虫がとまった。

てんとう虫は、動じない彼女にいつまでもとまっていた。