ウサギは恐れていた。
彼は久しぶりに洞窟を出たからだ。
久しぶりの太陽と広大な草原に眩しさを感じていた。
彼は知っていた。
この草原の中には、危険なヘビやキツネがいることを。
彼は耳が良かった。
色んな情報が聞こえてくるのだ。
彼は文字通り、縮こまった。
彼は思い出す。
洞窟の中は楽しかった。
毎日、歌って踊っていた。
少し暗いだけで、他になんの心配もなかった。
彼はやっぱり洞窟に戻ろうと考えていた。
そんな時、彼の耳にキツネ達が話をしているのが聞こえた。
雨が降りそうだから、今日もあの洞窟で過ごそうよ。
ウサギは仰天した。
洞窟にキツネ、いたじゃん!
ヘビの話声も聞こえる。
洞窟の村長に会いに行こうよ。
ウサギは震えた。
洞窟にヘビ、しかも、凄そうなのいたじゃん!
彼は悟った。
どんな場所でも、歌って踊れば良いのか。
彼は動じなくなった。
それは恐れではなかった。
彼は、どんな場所でも生きられる喜びを、前歯でゆっくりと噛みしめていた。