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象は、やり手だった。
大きな耳は、情報を得ることに特化していた。
便利な鼻は、遠くのものだって取ることができたし、
身の回りのことは、鼻さえ動かせば、なんだって出来た。
好きな言葉は、”コスパ”だ。
最小限の動きで、最大の効果を生む彼は、
まさに”コスパ”においてとても優れていた。
彼は、損をすることには非常に敏感だ。
全ての情報を手に入れて、最善を導き出す。
しかも、最短の時間で。時は金なりだ。
これは、大変な作業ではあるが、彼はそれをせずにはいられなかった。
その日も、その作業の真っ最中だった。
その時、真っ白な鳥が彼の頭にとまって、呟いた。
「この象さん、息をしてないわ。」
彼は、ハッと息を飲んだ。
情報整理に夢中で、彼は息をすることを忘れていた。
いや、全く息をしていない訳ではないが、呼吸が、かなり浅かったのだ。
彼は、呼吸の重要性について調べ始めた。
呼吸が、体や心に及ぼす影響はすごいらしい。
考えてみれば、最近、調子が良くなかった。
なんてこった。
自分には立派な鼻があるのに…
そう思って、思いっきり深呼吸をしてみた。
不思議と落ち着く。
ちょっと顔を上げて、空を見る。
心が洗われた感じ。
どんなコスパの良いものを手に入れた時より、気持ちがいい。
これだったか。
やり手の象は、何が大切か、すぐに気付くことが出来た。
少し落ち着いた彼の生活は、より豊かなものへと変化していった。
”コ” 心地よく
”ス” 吸って吐いて
”パ” パオーン
だな。
コスパの略を変えたようだが、彼にはこういうセンスは無いようだ。
彼の新しい”コスパ”は、彼の生き方を変えるほどの効果を与えたのであった。