空高く飛べる大鷲

↑ click preview

大鷲は、空高く飛ぶことが出来た。

それは、大鷲にとって、とても便利なことだった。

獲物を見つけるには重宝するし、

高くから下界を見下ろすことにも優越感を持っていた。

それが大鷲の一番の楽しみだった。

でも、一番便利だと感じていたのは、逃げることだった。

危険から身を守ること。

自分によくないことが起こることから避けること。

嫌な気持ちになる前にその場から立ち去ること。

もちろん、逃げることは大事なことだ。

逃げなければいけないこともある。

「逃げたなんて思ってないし。」

そう呟いた大鷲は、いつも恐怖心のようなものを感じていた。

今日も大鷲は空高く飛んだ。

いつもの風景。いつもの小さく見える街。

何がきっかけだったのだろう。

変わりたいと思った大鷲は、街へと降り立った。

ガチャガチャした街は、大鷲を好奇の目で見た。

彼にとっては、身の危険を感じるほどのストレスだった。

街は、彼を簡単には受け入れなかった。

「あぁ、やっぱりあの空へ飛んで行こうか」

そう呟いた時、小学校に掲げられた垂れ幕が目に入った。

『空高く、はばたけ!』

なんだか可笑しくなった。

自分だけは、逆のことをしている。

そう思った時、彼は飛ぶことをやめた。

街が彼を受け入れたかどうかは知らない。

でも、彼は街にいる自分を受け入れた。

大鷲の楽しみは2倍にも3倍にもなった。

空高く飛べる大鷲は、爪を隠してビルを見上げた。

「爪を隠すのは、鷹だったか」

彼はそう呟いて、そっと爪を出して笑っていた。